1.『プッシュテスト』に合格せよ

全フォーマット級の最強除去である《致命的な一押し/Fatal Push》によって、愚直なクリーチャーアグロは環境から死滅したと言って良いでしょう。
少し前のフロンティアではEtB能力を持たないクリーチャー、特に3〜4マナのものに対する風当たりは非常に厳しかったです。かの高名な《包囲サイ/Siege Rhino》ですらあまり使いたいカードではなくなりました。
こちらが4マナでサイを出している間に相手はフェッチを切り、1マナでプッシュを撃ち、残りの3マナを使って《時を越えた探索/Dig Through Time》を唱えているのです。ゲームが終わるほどの差を付けられています。

蔓延したプッシュに対してプレイヤー達は概ね三通りの方向性に流れることに。
・《集合した中隊/Collected Company》を使う
・プッシュされるクリーチャーをデッキから省き、《時を越えた探索/Dig Through Time》でコントロールする
・コンボを決める
これらは全て『単体除去』に対してデッキを強く進化させた結果です。

もちろん、例えば最速のアグロであるアタルカレッドには面展開からの火力連打という勝ち筋がありますが、アグロ側の選択肢がプッシュのせいで極端に減らされてしまっているためにメタられ易いというのはあると思います。

余談ですが『リフレクテスト』という物も存在しまして、まあ《反射魔道士/Reflector Mage》の事なんですが。
例を挙げると《搭載歩行機械/Hangarback Walker》などの死亡誘発クリーチャーがあまり流行らない理由はそこにありますね。《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》+《アーティファクトの魂込め/Ensoul Artifact》なんかも簡単に処理されてしまうため、個人的には微妙に感じています。


2.吹き荒れるコンボ旋風

上記の三竦みが相争ったところ、構造上の優位から明らかに飛び抜けて来たデッキがあります。
それこそが《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel》。

フロンティアで『青』と言えば《時を越えた探索/Dig Through Time》に目が眩みがちですが、実はカウンターがとても弱いです。モダンよりよっぽど弱い。アモンケットから《検閲/Censor》が参入してだいぶマシになりましたが、それ以前はコントロールを名乗りながらメイン60枚中カウンター0枚なんて事はザラにありました。
メイン戦はコンボを切って、対アグロのために強力な除去を積まざるを得ない。
確定カウンターが3マナ以上の物しかないのはモダンと同じにしても、2マナ不確定カウンターの選択肢があまりにも狭すぎてお話にならなかったのです。

そこを突いたのが霊気池デッキ。《織木師の組細工/Woodweaver’s Puzzleknot》でライフゲイン、《燻蒸/Fumigate》と《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》で全体除去、《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》で足止め、そして《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》がフィニッシュ。
基本的に素通しの霊気池には、アーティファクト除去を持っていても1度はガチャされてしまう。なんとか大物を凌いだとしても、やがて訪れるエムラクールまでに決着をつける事が出来ない。これがフロンティアのコントロールです。

バントカンパニー系のデッキなら不利とまでは言いませんが、カンパニーがデッキ全体にかけるスペル枚数の制約が厳しく、否認を構えたところにイシュカナが着地し攻勢が止まるところを何度も見ました。
コントロール相手に《反射魔道士/Reflector Mage》や《呪文捕らえ/Spell Queller》が腐るのも厳しく、《衰滅/Languish》やスゥルタイ昂揚型の場合はイシュカナに盤面を制圧され、やがて《奔流の機械巨人/Torrential Gearhulk》が圧倒的アドバンテージ差をつけて決着します。

それでは《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel》によってフロンティアは制圧されてしまうのでしょうか。他デッキを考えず、多量の打ち消し呪文によるパーミッションでなければ霊気池には勝てないのでしょうか。

そこに現れたのが《サヒーリ・ライ/Saheeli Rai》。
スタンダード禁止の憂き目にあった《守護フェリダー/Felidar Guardian》と共にフロンティアに乗り込んで来た彼女。(禁止後明らかに勢力を増しています)
なんと霊気池デッキに対して強かったのです。

3ターン目、サヒーリを出して+能力。
これだけで霊気池側は身動きが取れません。肝心要の霊気池が置けないのです。
1枚コンボとはいえ、4マナのソーサリーアクションは大きな隙を晒すことになります。しかも一回の能力起動で勝てるわけではない。
対してサヒーリ側は《払拭/Dispel》だの《無私の霊魂/Selfless Spirit》だのを構えながら一度だけコンボを決めれば勝ちですから、この差は大きい。

スタンダードの4cを改良した物や、エネルギー要素を排除し再構成した物、或いはダークジェスカイコントロールにコンボを搭載した物など、今はプレイヤーの数だけサヒーリコンボが存在するような状況ですが、それ故研究が加速しているとも言えます。
《燻蒸/Fumigate》を搭載してアグロに強くしたり、《時を越えた探索/Dig Through Time》でパーツを揃えたり、《集合した中隊/Collected Company》を用いてエネルギーを貯めたり、あまりの自由度に可能性は無限大です。


3.爆片破のススメ

そんなこんなでラリーやダークティムールをさんざ回していた私も新たな可能性を探したくなりました。

最初は抜群のコンボ耐性を誇る青赤アーティファクトで《頑固な否認/Stubborn Denial》を試そうと思っていたのですが……。
《アーティファクトの魂込め/Ensoul Artifact》が引けないとクロックが細く、コントロールの《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》と《スゥルタイの魔除け/Sultai Charm》、バントカンパニーの《反射魔道士/Reflector Mage》と《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》が乗り越えられず断念。

そこで思いついたのが、昔使った赤黒ドラゴン。今や《雷破の執政/Thunderbreak Regent》はプッシュテスト不合格なので使う気にはなれませんが、重要なのは低マナ帯の動き。
《密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter》→《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》というマナカーブは、除去環境でこそ輝くのではないか?

ソーサリーの全体除去に対し、機体というシステムと《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》の組み合わせが非常に強いのはスタンダードで周知されています。
何より《キランの真意号/Heart of Kiran》がフロンティアで動いている姿を見たことがなかったので、早速組み上げたところこれがなかなか悪くない。

マルドゥ機体

土地 23
感動的な眺望所 4
秘密の中庭 4
戦場の鍛冶場 4
コイロスの洞窟 3
産業の塔 3
血染めのぬかるみ 2
山 2
沼 1

クリーチャー 17
模範的な造り手 4
スレイベンの検査官 4
屑鉄場のたかり屋 4
ゴブリンの熟練扇動者 4
ピア・ナラーとキラン・ナラー 1

スペル 20
致命的な一押し 3
爆片破 4
密輸人の飛行機械 4
キランの真意号 3
無許可の分解 2
ゼンディカーの同盟者、ギデオン 4

サイド
ウェストヴェイルの修道院 1
致命的な一押し 1
集団的蛮行 3
精神背信 1
神聖なる月光 2
光輝の炎 2
コラガンの命令 2
反逆の先導者、チャンドラ 2
真面目な訪問者、ソリン 1


フロンティア版マルドゥ機体ですが、基本的な動きはスタンダードの物とほとんど変わらないはず。2ターン目にコプターとキラン号のどちらを出すべきかは未だによくわかりませんが。

機体というシステムは搭乗しなければクリーチャー除去の一切にかからず、相手のライフとPWに強い圧力をかけられるため、環境にとても合致しています。
《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》だけは本当にヤバいですが、せめて本体だけでも除去できればギデオンや機体の高スタッツで押し通せなくもないです。更にたかり屋のおかげで《爆片破/Shrapnel Blast》が腐らないため、序盤に削ったライフを火力で押し切るというアグロ理想の動きが多くのデッキに刺さります。


4.後書き

混迷するフロンティア環境ですが、それ故なかなか飽きずに遊べている面もあると思っています。

致命的な一押し
反射魔導師
集合した中隊
時を越えた探索
墓後家蜘蛛、イシュカナ
密輸人の回転翼機
霊気池の驚異
守護フェリダー

これら凶暴なカード達が所狭しと暴れ回るようなフォーマットですが、だからこそ他にない興味を惹かれます。晴れる屋さんが商品バラ撒いてるのもありますが。
狭い世界ですから、結果を残すのも比較的簡単で、その影響は大きいと感じています。
そういったフロンティア独自の魅力が少しでも広まって、プレイヤーが増えるといいなあ。

長文お付き合い、ありがとうございます。

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