1.そもそも環境とは

とりあえず、今の自分が考えるフロンティアtierリストが以下の通り。

・tier1
ジェスカイウィンズ
ティムール霊気池
アタルカレッド
UBxコントロール

・tier2
URハサミ
先祖の結集
サヒーリエネルギー
バント人間カンパニー


ここで言うtier1とtier2の、そしてそれ以外の差はあくまで自分基準ですが、「プレイヤー人口」と「最近勝ってる」かどうかです。
フロンティアは大会数が限られているため、プレイヤーの研究よりも新パックの発売による変化の方が速く、カードプールの更新に伴って以前のデッキが通用しなくなることがあります。

上に挙げたデッキ名を見ただけではあまり伝わらないはずなので、たとえ話をしましょう。
その昔、アブザンアグロというデッキがありました。
始まりの木の管理人・アナフェンザ・サイにギデオンなどの代表的クリーチャーで2マナ〜4マナのカーブを描き、プッシュやドロコマ、アブザンの魔除けという優秀なスペルでバックアップする『ミッドレンジ』デッキですね。

はい。アブザンアグロですが、これはフロンティアにおけるミッドレンジになります。

何が言いたいのかというと、それはアブザンアグロが廃れた理由そのもの。
アタルカレッドや青赤ハサミといったアグロデッキは基本的に1〜3マナで動きます。
逆にコントロールは時を超えた探索と共に6マナの青巨人がフィニッシャーと言えるでしょう。
そしてアブザンの速度では、霊気池やサヒーリなどのコンボデッキに対して普通に間に合いません。攻め手が遅く妨害するしかないのに、カウンターを使えず、コジレックの審問や思考囲いが存在しないフロンティアでは、真っ当な干渉は望めませんからね。

つまり、フロンティアの環境というのは中途半端な速度のデッキに厳しいです。

1マナから動かないのは、アグロに対してワンテンポ遅れるということ。
バニラに近いクリーチャーを出すのは、プッシュや反射魔道士にテンポを取られるということ。
カウンターや火力を持たないのは、コンボデッキに無防備ということ。
アブザンアグロならジェスカイウィンズには勝てるでしょうが、ジェスカイウィンズなら霊気池やサヒーリやラリーに勝てます。

自分でデッキを組む際にはある程度高tierの対策はしておいた方が良いでしょう。
全てに弱いというのは論外にしても、何らかの強みがあるならば、それがそのデッキの魅力になるはずです。
ですがそのためには、仮想敵のことを知らなければいけません。


2.強いデッキについて

それではフロンティアで強いデッキのどういうところが強いのか、軽く見ていきたいと思います。


・ジェスカイウィンズ

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD10556W/

注目カード:コプター、無私の霊魂、呪文捕らえ、ギデオン
要警戒テックカード:反射魔道士、魂火の大導師、残骸の漂着

無私の霊魂、呪文捕らえ、反射魔道士などで徹底してテンポをとり、優秀な飛行クロックで攻め立て、火力で締める。非常に強力なテンポアグロ。
青白赤三色の組み合わせはフロンティアでも飛び抜けてサイドボードが強く、置物干渉からPW、カウンター、ライフゲインと隙がないです。
ただしコントロール戦術に弱く、全体除去などでアドバンテージを失ってしまった場合、火力だけではライフを詰めきれないという欠点があります。
マナカーブは1〜4マナでやや3マナに偏っています。最速よりは少し遅いアグロですね。

対策:引き裂く流弾、削剥、コラガンの命令、衰滅、破滅の刻、ヴリンの神童ジェイス、最後の望みリリアナ


・ティムール霊気池

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD10555W/

注目カード:霊気池、ウラモグ、アズカンタの探索、織木師の組細工
要警戒テックカード:コジレックの帰還、ヴリンの神童ジェイス、不屈の追跡者

禁止カードの貫禄。
エネルギーを貯めて4ターン目に霊気池の驚異を設置。後は好きなタイミングで起動して、ウラモグが登場すればゲームセット。フロンティアを代表するコンボデッキです。
エネルギーを6個貯める動き自体が、盤面を強くしたりライフゲインを兼ねているので、普通のミッドレンジとして振る舞いつつ隙あらば霊気池。アズカンタの探索で土地を伸ばせるのでウラモグ素出しも可能。
その構造上、青くないデッキ相手には理不尽なまでに強いです。
とはいえ色の制約上不得手な部分もあって、除去が火力しかなかったり、相手の手札に干渉出来ないのでカウンターにテンポを取られたりしがち。青いアグロは苦手。
アドバンテージ獲得手段をパーマネントに頼っており、カウンターとドローだけで構成されているガチガチのコントロールも厳しかったり。

対策:魔術遠眼鏡、呪文貫き、否認、不許可、屑鉄場のたかり屋、呪文捕らえ、ナントゥーコの鞘虫、熱烈の神ハゾレト、逆毛ハイドラ、ゼンディカーの同盟者ギデオン


・UBxコントロール

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD10068W/
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD36493S/

注目カード:アズカンタの探索、時を越えた探索、奔流の機械巨人
要警戒テックカード:デッキカラーによる

デッキの構造や追加のフィニッシャー選択は十人十色で、ひとまとめに扱うのは本来難しいのですがここはお許しください。
基本戦術は徹底したインスタントアクションによる妨害から、時を超えた探索、奔流の機械巨人と叩きつけて、相手のリソースを枯らせばゲームセット。
更なるパワーカード(特にコラガンの命令)を求めて赤に触るか、全体除去やライフゲインを望み白を触るか、いっそ全部盛るかは人によるところ。
アズカンタの探索という、フラッドにもスクリューにも対応しつつ青巨人を1ターン早める新戦力は、土地に干渉し辛いフロンティアではこの上なく強力に噛み合っています。
トークン戦略への対応や、不許可が間に合わない継続的ダメージ兼アドバンテージ手段に対抗し辛いという弱点こそありますが、それすら圧倒的アド差で踏み潰しかねないデッキパワーのあるアーキタイプです。

対策:脅迫、軍団の上陸、見えざるものの熟達、屑鉄場のたかり屋、不屈の追跡者、約束された終末エムラクール、ヴリンの神童ジェイス、最後の望みリリアナ


・アタルカレッド

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD10753W/

注目カード:僧院の速槍、ゴブリンの餌、アタルカの命令、ラムナプの遺跡
要警戒テックカード:強大化、暴れ回るフェロキドン、熱烈の神ハゾレト

フロンティアの最速と言えばコレ。環境に蔓延るライフゲインカードたちの採用理由をひとえに担っているデッキでしょう。
シンプルに速く、安定しているため、多くのプレイヤーが意識して対策を重ねてきました。もしもガードを薄くしようものなら必ずブチ抜かれます。
海外ではRg Prowessと称されるこのデッキの戦法は、1マナ1/2果敢のクリーチャーを展開し、トークンスペルや火力によるバックアップで殴り抜けるという単純明快そのもの。
旧スタン時代から多くの新戦力を得ており、損魂魔道士の加入によって更に層を厚くしています。
tier1の中では飛び抜けた存在感を放っているがため、特にその内部でもメタを食らう立場にありますね。
上に挙げた他3デッキはどれもメインからライフゲインパーツを備えており、盤面を制圧された後に回復され、火力圏外に逃れられるという負けパターンを確立されてしまっています。
とはいえ屑鉄場のたかり屋を採用するなどの工夫をして環境に適応しようとするプレイヤーもおり、まだまだ油断ならないアーキタイプと言えるでしょう。

対策:集団的蛮行、神聖な協力、否認、光輝の炎、コジレックの帰還、ムラーサの胎動、燻蒸、領事の権限、スレイベンの検査官、魂火の大導師、つむじ風の巨匠、ヴリンの神童ジェイス


・URハサミ

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD40061S/

注目カード:アーティファクトの魂込め、爆片破、幽霊火の刃
要警戒テックカード:呪文貫き、金属の叱責、霊気圏の収集艇

M15とカラデシュの恩恵を一身に受けるアーティファクトアグロ。
飛行機械トークンに幽霊火の刃を付けたり、搭載歩行機械を爆片破でサクったり、ダークスティールの城塞にハサミを付けたりしてライフを削ります。
とはいえフロンティア全体において密輸人の回転翼機が幅を利かせているせいで、削剥やコラガンの命令といったアーティファクトヘイトがメインから蔓延っており、捌かれて息切れしてしまうことも。
アタルカレッドと比較して安定度が低く、メタカードが刺さりやすいのが弱点と言えます。
ただし肝心のアタルカレッド相手に有利が付くというのもあり、根強い人気を誇るアーキタイプです。

対策:致命的な一押し、削剥、否認、帰化、ドロモカの命令、コラガンの命令、コジレックの帰還、残骸の漂着、呪文捕らえ、反射魔道士、ゲトの裏切り者カリタス、ヴリンの神童ジェイス、最後の望みリリアナ


・サヒーリエネルギー

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD35504S/

注目カード:サヒーリ、守護フェリダー、つむじ風の巨匠、ニッサの誓い
要警戒テックカード:無私の霊魂、不屈の追跡者、各種PW

在りし日のスタンダードを制圧した最速のコンボデッキ。
3ターン目にサヒーリが着地した瞬間、あらゆるデッキは大きなソーサリーアクションを封じられます。ですが、逆にその返しにサヒーリを落とせるなら問題ありません。
コンボ自体は火力やプッシュなどで妨害出来ることもあって、スタン時代ほどの圧力はありませんが、油断は禁物。
エネルギーカウンターによる分厚いシナジーと、ニッサの誓い+守護フェリダーによる継戦能力は並みではありません。
とはいえ基本的にはひたすらソーサリーアクションを続けるしか無いデッキです。コンボを阻止しつつ思い切り殴ってくるアグロや、逆にコンバット後にコンボを決めても意味のないコントロール相手はあまり得意とは言えません。
その代わり、お互いにそこまで干渉し合わないコンボ相手の場合は、圧倒的速度で置き去りに出来るでしょう。

対策:引き裂く流弾、致命的な一押し、稲妻の一撃、軽蔑的な一撃、破滅の刻、領事の権限、魔術遠眼鏡、キランの真意号、歩行バリスタ、暴れ回るフェロキドン、熱烈の神ハゾレト、竜王アタルカ


・先祖の結集

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD07635K/

注目カード:ナントゥーコの鞘虫、先祖の結集、集合した中隊
要警戒テックカード:ヴリンの神童ジェイス、帆凧の掠め取り、改革派の結集者

フロンティアの墓地コンボと言えばコレ。
サテュロスの道探しやカンパニーによる展開で墓地を溜め、最終的には先祖の結集でズーラポートの殺し屋を含む大量展開から、ナントゥーコの鞘虫によるサクリでライフを直接狙います。
デッキの骨格が『四色カンパニー+先祖の結集1枚コンボ』で出来ているため、仮に墓地を抑えたとしても、カンパニーによる展開だけで押し負ける可能性は十分にあります。
ナントゥーコの鞘虫という恐るべきパンチ力を秘めたクリーチャーがインスタントタイミングで出てくるのですから、一切の油断は禁物。
改革派の結集者によって何度でも蘇るヴリンジェイスが繰り出すカンパニーを止め切るというのも中々難しいでしょう。
とはいえやはり弱点はありまして、飛行クロック(特にコプター)に対する脆弱性は如何ともし難い物。ジェスカイフライングや青赤ハサミには厳しい戦いを強いられます。
ライフゲインやジェイスなど、カンパニーにおけるアドバンテージ面を強く用いるラリー。クリーチャー戦しつつアドを取って必殺のコンボまである、という対応力に惹かれる方、オススメです。

対策:屍肉あさりの地、致命的な一押し、払拭、否認、軽蔑的な一撃、コジレックの帰還、没収の曲杖、魔術遠眼鏡、密輸人の回転翼機、カマキリの乗り手、先頭に立つ者アナフェンザ、ゲトの裏切り者カリタス、約束された終末エムラクール


・バント人間カンパニー

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD10560W/

注目カード:集合した中隊、サリアの副官、改革派の結集者、不屈の追跡者
要警戒テックカード:ドロモカの命令、反射魔道士

王道を往く部族アグロ。
サリアの副官というフロンティア最強のロードを最大限活用するため、ほぼ全てのクリーチャーを人間で占め、愚直にライフを狙うカンパニーデッキ。
例に漏れずその破壊力をカンパニーに依存していますが、最高の1マナと名高いスレイベンの検査官や、新戦力である改革派の結集者による展開力は凄まじいの一言。不屈の追跡者によるアドバンテージも加わって、中々攻めが途切れません。
反射魔道士やドロモカの命令という超強力な盤面干渉力も見逃せず、生半可な展開や妨害ではあっという間に押し切られてしまうでしょう。
しかしアグロとしての宿命からは逃れられず、全体除去への耐性は非常に低いです。
フロンティアのコントロールデッキは時を超えた探索のせいで非常に対応力が高く、本体火力が無いのも相まって、絶望的なマッチアップと言っても良いのではないでしょうか。
コンボ耐性もそこまで高いとは言えず、やられる前にやる、という心意気で臨むしか無いです。

対策:致命的な一押し、光輝の炎、鞭打つ触手、バントゥ最後の算段、残骸の漂着、衰滅、燻蒸、命運の核心、ゲトの裏切り者カリタス、龍王アタルカ、ヴリンの神童ジェイス


3.ミッドレンジの提案

以上、高tierデッキの解説をして来ました。
しかしながらやはりフロンティアには、モダンで言うところのフェアデッキ、即ちミッドレンジが欠けているように見えますね。
その理由は既に述べましたが、それではフロンティアでは絶対にミッドレンジは成立しないのでしょうか?
いや、そうではない。まだ研究されていないフロンティアが存在するはず。

そこであるカードに注目しました。
それは《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra》。
包囲サイとは違ってトランプルこそ無いものの、プッシュされず反射されず、マナクリから3t着地もアリ。
マナを払っただけの影響が、必ず盤面に与えられるクリーチャー。これを中核にすればいいのでは。


・ティムールエネルギー

サンプルレシピ
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD10760W/

注目カード:逆毛ハイドラ、つむじ風の巨匠、不屈の追跡者
要警戒テックカード:ティムールの魔除け

上で触れたティムール霊気池とサヒーリエネルギーは、どちらもデッキの根幹にエネルギーシナジーを組み込んでいます。
それならばエネルギーを主体にして普通に殴るデッキも成立するはず、というところからこのデッキは出来ています。(丁度スタンダードでエネルギーの禁止が出たのもあって。)
フロンティアにおける2→3→4のマナカーブを実現してみせました。
やはり逆毛ハイドラ、このカードが強いこと強いこと。ひとたび着地すれば、有り余るエネルギーから除去耐性とサイズは無限大。地上を支配し、速やかに相手のライフを削るでしょう。
カラー的に対処し辛い飛行や横並べも、つむじ風の巨匠にかかれば何のその。
コンボデッキに対しても、軽いクロックからカウンターを構えて殴るだけというお手軽さ。ハンデスと比較して、カウンターはそれなりに存在するフロンティアらしい対処法です。

マナカーブ通りに展開して粘り強いクリーチャー群と、それをバックアップするスペル。盤面を作った後の長期戦こそが本懐。
アグロよりは少し重く、コンボやコントロールにも怯まず向かっていける。これこそがミッドレンジでしょう。


4.後書き

長くなりましたが、以上が私の視点から見たフロンティアを形作る環境です。
どんなフォーマットだって、カードプールがあれば環境があります。その形は様々ですが、フロンティアのそれはこんな感じであるというのが少しでも伝われば良いなあと。
モダンでも禁止改定でエラいことになっていますけど、スタンダードで4cエネルギーの禁止が出たのはそう遠い話ではありません。
もしもエネルギーを使いたいという方が居れば、こういう形でフロンティアに参戦することも出来ますよ〜〜。

長文をお読みいただきまして、ありがとうございました。

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