0.前書き

フロンティア神挑戦者決定戦も終わりまして、
「もうフロンティアなんてやらないなあ」
という人も多いのではないでしょうか。

いやまあ、もちろん気持ちはわかります。大会も少ないし、中々プレイヤーもいない。
でも私は悔しいです!

フロンティアに興味を持ってもらいたい。
そんな想いで筆を取りました。


1.フォーマット:フロンティア

今回のターゲットはズバリ
「エターナルフォーマットに興味がある。ちょっと前のスタン資産ならあるけど、モダンが組めるほどじゃない」
「ローテ落ちしたスタンデッキをもう少し使いたい。けど、モダンに持ち込めるほどのパワーが無い」
というそこのアナタ。

デッキのお値段的な面で考えると、フロンティアは明らかにモダン以下よりお安いです。
ですが0から構築するとなると、スタンダードのデッキと同じくらいの金額がかかってしまうことも。

そこで、禁止やローテで使わなくなったカードプールから、フロンティア用のデッキを作成。
これならとてもお手軽にエターナルフォーマットへ参入出来ます。

フロンティア楽しいですよ!
是非やってみましょう!

フロンティアの魅力。
それはモダンでは見向きもされない、近代スタンダードのパワーカードたちをもう一度使えること。
禁止されたアイツやコイツ、ちょっと前にスタン落ちしたあのフィニッシャー。
それどころか、下環境に行っても禁止されてるようなヤバいカード。
そんな奴らが輝く場所なんです。

そして幅広いアーキタイプの存在。
アグロにコンボ、コントロールとなんでもござれ。
デッキ開発よりも新パック発売の方が速いなんてフォーマットには、常に正しい一つの正解なんて物はありません。
手探り状態の環境を求めるプレイヤーには堪らないはず。

とはいえ仮に「やってみよう!」となってもらえたとしても、当てもなく大海原に投げ出してしまうというのはあまりにも無情。

ここからは、フロンティア向けにデッキをカスタマイズする、あるいは自分でオリジナルデッキを組む。
そんな方のために、フロンティア環境ではどんなところに気をつけてデッキを組めば良いのかお伝えしていきます。

元がどんなデッキで、どんなコンセプトだとかは一旦気にしません。
75枚を思い浮かべつつ読んでもらうことで、理解しやすいようにしていきたいです。


2.注意すべきは1マナ・4マナ

敵を知り己を知れば百戦危うからず。
マジックに当てはめると、自分のデッキを調整したり実際にプレイするときに、相手になりそうなデッキの中身やアクションを知っていることも重要というわけですね。

フロンティアのカードプールを見渡すと、1マナの選択肢というのは極端に少ないです。

赤:《僧院の速槍/Monastery Swiftspear》、《乱撃斬/Wild Slash》
緑:《エルフの神秘家/Elvish Mystic》、《霊気との調和/Attune with Aether》、《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald》
白:《スレイベンの検査官/Thraben Inspector》
青:《選択/Opt》、《呪文貫き/Spell Pierce》
黒:《致命的な一押し/Fatal Push》、《強迫/Duress》


1マナ→1+1マナと動けるのは、果敢込みで爆発力の高い赤単や白系アグロ程度でしょうか。
それ以外のカード群は、攻め手ではなく後半にも使えたり、自分の動きを整えたりするようなラインナップなんです。
《密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter》などに代表される、フロンティアでの主な攻め手はやはり2マナから。


これにより、フロンティアのデッキは大きく2つの思想に分かれました。

・1マナから動けるというのは、他デッキとの強烈な差別点になり得る(僧院の速槍、模範的な造り手、ボーマットの急使)。
→アグロ

・1マナでは無理に動かず、初手にあると嬉しいけど後半引いても強いカードを入れておけば良い(致命的な一押し、スレイベンの検査官)。
→テンポアグロ・コントロールなど


では、ゲームを決定付けるほどの強烈なアクションとは?
答えは4ターン目。

《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar》
《集合した中隊/Collected Company》
《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel》
《包囲サイ/Siege Rhino》、《逆毛ハイドラ/Bristling Hydra》、《ピア・ナラーとキラン・ナラー/Pia and Kiran Nalaar》などなど……
《衰滅/Languish》や《残骸の漂着/Settle the Wreckage》など全体除去
マナ加速から5マナのカード。
《時を越えた探索/Dig Through Time》も、テンポよくアクションしたりフェッチランドを絡めることで、概ね4ターン目にキャストすることが出来ます。

自分が先手の時、如何に強烈な4ターン目を叩きつけるか。

後手を持った時、如何に相手の4マナアクションを捌き、盤面を返すか。

軸をズラして4ターン目には既に勝っているようにする。カウンターを構えて4マナを打ち消す。様々なコンセプトが存在しますが、全ての焦点が『4ターン目』に合わさっているのは間違いありません。


5ターン目というのは、アグロデッキからすれば実質ラストターン。たとえ盤面を制圧するようなカードを使ったとしても、本体火力が飛んできて終わりかねません。

とはいえ私自身が《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》を使って勝ち進んだように、5マナ以降のカードが即不要、という訳ではないのです。
あくまで最速のデッキに間に合わないというだけで、お互いに凌ぎを削り合い、長期戦にもつれ込んだとしたら。
継続的なアドバンテージソースや、カード1枚単位のパワーが高い方が勝つわけです。
この点は4項でも述べたいと思います。


ですので、一人回しなどの際には是非とも
『ここでギデオン出てきたらどうしよう』
『ここでカンパニー撃たれたらどうしよう』
『ここで霊気池……いやそれはどうしようもない』
などなど、一人回しの際に仮想敵のこともシミュレートして貰えたらなと。


3.クリーチャーに厳しい環境


もう少し正確に表現すると、フロンティアは『cip能力や除去耐性や速攻・瞬速・呪禁を持たないクリーチャーが活躍し辛い環境』です。

その理由は、《致命的な一押し/Fatal Push》と《反射魔道士/Reflector Mage》。
フロンティアのクリーチャーはこの二種類のとんでも除去によって抑圧されている、と言っても過言ではありません。

かたや4マナ以下のあらゆるクリーチャーを、1マナという超軽コストで墓地へと突き落とし、多大なテンポを獲得する極悪軽量除去。
かたやどんなに強力、どんなに巨大なクリーチャーだろうが手札に戻し、1ターンの間封印してしまう3マナ2/3の人間・ウィザード。

アブザンアグロのような愚直デッキが息をしていない元凶ですね。
当たり前の話なんですけど、《包囲サイ/Siege Rhino》が1マナインスタントで除去されたり、せっかく第3の能力を起動するところまで行った《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree》がバウンスされた挙句に再キャストすら封じられたら、やってられないですよね。
ところが、これが《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》なら何度除去されても帰って来ますし、《密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter》ならば反射されることはありません。
瞬速持ちも反射の封印を最小限に抑えられますし、そもそも呪禁を持っていれば場を離れずに済みます。

なのでフロンティアのクリーチャーは必然的に、cip能力や瞬速、除去耐性を持つことが求められてしまいます。機体やトークン系カードがフロンティアで強いのは、1:1交換を防ぎつつ反射による被害を少なく出来るからなんです。
《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow》なんかは理想的な除去耐性持ちと言えます。5マナ・タフ5・強力なcip持ちで文句ナシ。

タフネスに関して意識するのならば、

タフ2:《乱撃斬/Wild Slash》、《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》、《コジレックの帰還/Kozilek’s Return》
タフ3:《削剥/Abrade》、《光輝の炎/Radiant Flames》
タフ4:《闇の掌握/Grasp of Darkness》、《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》

タフ5以降のクリーチャーが、あえてタフネス参照除去を意識する必要は無いでしょう。

フロンティア環境は近年のスタンダードの影響色濃く、クリーチャーが比較的強いエターナルフォーマットだと思います。
だからこそ、どんなデッキにもクリーチャーが採用されていて。
だからこそ、汎用除去として致命的な一押しや反射魔道士があらゆるデッキから飛んできます。
構築の際には、必ずこれを前提条件として臨んでください。


4.継続的アドバンテージ

スタンダードで言えば、《スカラベの神/The Scarab God》が最も相応しいでしょうか。
かの神がひとたび盤面に定着すれば、立ち並ぶ4/4と占術+ライフルーズが一瞬で勝負を決めてしまう。
もちろん、能力を何度も起動させる前に片をつけることも出来ますが、とにかく盤面が膠着してしまえば、戦線の行方を左右するのはそういったアドバンテージ源である、というわけです。

様々なデッキ構築の可能性があるこのフォーマットで一概に言いたくはないのですが。サイドボードにこういったカードを採用することは、対コントロールなどに限らず、ミラーを制する鍵になることも。

注目すべき点は、重いか軽いか。除去される手段は何か。カウンターをどう乗り越えるか。

各色に存在する有力なアドソースを紹介していきます。


・赤

《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》
最も有力です。クリーチャーでの攻めから軸をズラせるPWであり、初期忠誠度も高い。
継続的ダメージ兼アドバンテージの獲得、マナ加速、4点除去、そして奥義も速く優秀。
フロンティアには直接PWに干渉するカードが少なく、戦闘ダメージと火力の合わせ技で処理することが多いため、膠着した盤面では力強く対戦相手を追い詰めてくれるでしょう。

《前哨地の包囲/Outpost Siege》
チャンドラとの違いはカードタイプと、土地が置けること。それに尽きます。
着地したエンチャントの干渉され難さはフロンティア随一で、更に言えば《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》擁する赤ということもあり、アグロだから土地を伸ばす行為に意味が無いわけでもない。
伝説ではないので重ね引いても良く、チャンドラの散らし先としても十分なカードです。


総評として、赤いカードはチャンドラ以外だとメタ面で強いカードが多く、継続的アドバンテージは他の色に任せるべき。
ただし赤入りの多色には強力なカードが色々あるため、そのためにタッチするという選択肢は大いに有力。


・緑

《不屈の追跡者/Tireless Tracker》
土地を出すと手掛かりが出る。
最強にして本命。これには様々な理由があります。
まず3マナのクリーチャーであること。そして出た時点で手掛かり1つを得られること。
継続的アドバンテージ源というのは簡単に除去されてはマズいので、非クリーチャーの場合が多いのですが、それだと対青で困ったことに。
《否認/Negate》と《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》が越えられないのです。
そしてフロンティアではコプターが流行っているのと、出てきた軽いクリーチャーはプッシュしてしまえば良いので、《本質の散乱/Essence Scatter》がクッソ弱い。
以上から、通しやすく、フェッチランドと合わせてプッシュと3:1交換が可能で、墓地やライブラリから手札に加えやすいトラッカーは、緑を使うのならば間違いなく採用すべきカードです。
相手が青くなければ尚更のこと。このクリーチャーを盤面に定着させた方が勝つという、恐るべきパワーを示してくれるはず。

《棲み家の防御者/Den Protector》
万能回収5マナ3/2。
弱くはないんですけど、どうにも遅い印象が否めないか。
こいつ自身が継続的にアドバンテージを得るわけではないため、《生命の力、ニッサ/Nissa, Vital Force》や《ムラーサの胎動/Pulse of Murasa》、《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》といった他の回収カードと比較されがち。
《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald》からシルバーバレットする分には十分なカードなので、そういった用途でどうぞ。

《生命の力、ニッサ/Nissa, Vital Force》
パワーはあるんですけどね……。
ちょっと重いですが、5マナ5/5速攻の破壊力はそれなり。対PW戦にも力強く、能力も各種取り揃えております。
とはいえどうにも優先順位が下がりがちなのは、トラッカーのせいなのか。

《世界を目覚めさせる者、ニッサ/Nissa, Worldwaker》
実質6マナは重い。初期忠誠度が低い。
それらを乗り越えれば、毎ターン生み出される4/4トランプルが速やかにゲームを決めてくれるでしょう。
つまりは、継続的アドバンテージ源というよりかフィニッシャーの枠ですかね。

総評として、緑は《不屈の追跡者/Tireless Tracker》の色であるということ。
コイツが一番。


・白

《見えざるものの熟達/Mastery of the Unseen》
コントロール絶対殺すエンチャント。
軽く妨害をすり抜けて着地しつつ、死ぬほど干渉し難い。
とはいえ軽い分だけ起動が重いカードでもあるので、よほど長期戦になる展望が無ければサイドインし辛い面も。

《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》
フラッド受けを担える2マナ2/2絆魂。
火力を採用しないと使い物にならない点が困り物だが、何度も場に出し易く、ライフゲインという役割を持ちつつフィニッシャー足り得るカード。

《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar》
2/2や紋章を生み出す5/5破壊不能のハードパンチャー。
強すぎるのでここに載せましたが、サイドというよりかはメイン向けのカード。
先手4ターン目ギデオンが通ればそら勝つ。


総評として、白は熟達とギデオンの色。
熟達のことをご存知無かった方はぜひ使ってみて下さい。赤単相手の1ターン目《領事の権限/Authority of the Consuls》と、コントロール相手の2ターン目熟達はだいたい同じです。


・青

《時を越えた探索/Dig Through Time》
貫禄のモダン禁止、レガシー禁止、ヴィンテージ制限。
フロンティアのコントロールというのはそりゃ打ち消しもしますが、基本は除去除去除去探索除去除去青巨人探索です。
超軽く、超アドバンテージを、青巨人と組み合わせて。これがまたどうしようもない……
このカードがあるだけで、コントロール側はアドバンテージの心配をせずに済む。
とはいえ、探査6は一回ならともかく連打するには少々重い面も。コントロールを倒すならコイツを何とかしましょう。

《アズカンタの探索/Search for Azcanta》
墓地7枚で土地になり、下手なミシュラより強い。
PWよりもよほど軽く干渉され難く、擬似占術とマナ捻出で最低限の仕事をし続け、一旦盤面が膠着すればひたすらカードを供給し始める恐ろしいカード。
墓地肥やしと組み合わせて3ターン目に反転する事も。
コントロールミラーはこれ占有した方が勝ちます。お願いですんで《廃墟の地/Field of Ruin》を採用しましょう。《時を越えた探索/Dig Through Time》など探査との噛み合いは悪く、やはり墓地を増やすギミックを用意すべきか。

《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》
アズカンタにお株を取られた感のあるやつ。
フロンティア最軽量のPWかつ、2マナ0/2のクリーチャーでもあるため、除去を減らしてもらえるサイド後向きのカード。
マナコストにしてはかなり強力な盤面干渉力と、擬似的なフラッシュバック付与は様々なマッチアップで強力。
何より素晴らしい点が、奥義で勝てること。
ただのPWなら出して墓地行ったらおしまいのところ、各種クリーチャーシナジーを受けられるのが良い。


総評として、探索強すぎ。
青なんて別にこれ以外にもアドバンテージ源は色々あるはずなんですが、ここで述べた三種類がそれぞれ三方向に強いベクトルが違っているうえに、全部2マナとかいう異次元の軽さなので、これらを越えるものは中々無いんじゃないかと。


・黒

《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》
何度でも蘇るトンデモアタッカー。
インスタントタイミングで蘇るのでソーサリー除去に強く、《反射魔道士/Reflector Mage》の封印は《密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter》などルーターでカバー可能。
ブロック出来ないのでアグロには弱いですが、その継続戦闘能力はフロンティア1と言っても良いかと。
アーティファクトシナジーが活かせるとなおよし。

《アルゲールの断血/Arguel’s Blood Fast》
2ライフと2マナで1ドロー。
熟達の黒版みたいなカードですが、こちらも強烈だと思います。
フロンティアのコントロールは攻め手が大振りですから、青巨人をキッチリ対処できるならガンガンライフを払っても大丈夫。

《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》
能力全部が破壊力ありすぎるのに3マナ。
プラスの盤面干渉力、マイナスで得られる大きなアドバンテージ、奥義によるイージーウィン。
ダブルシンボルの捻出以外に弱点と言える部分が無く、非常に強力なPWです。

《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
クリーチャー戦の鬼。
除去を構えて出てきただけでもう凄い。
トークン生成と絆魂と自己強化が全て噛み合っている。プッシュ擁する黒ということもあって、対クリーチャーデッキではとても強力なフィニッシャー兼アドバンテージ装置です。


総評として、フロンティアの黒は強い代わりに色マナシンボル的拘束も厳しい点があります。
勿論タッチも可能ですが、プッシュを1ターン目からキャストできるマナベースを組むと必然的に黒黒が取り扱えるようになるというか。
ダブルシンボルのえらい強力なカードが使えるようにもなるので、タッチに抑える理由があまりないんですよね。


・多色

《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》
ディグに比肩しうるパワーカード。
フロンティアで機体が流行ってるとか、タフネスが関係ないプッシュと反射のせいで2点が活用し易いとか、ただでさえ強いクリーチャーを再利用出来るとか。
《時を越えた探索/Dig Through Time》のような単純なドローソースとは異なり、各効果が噛み合ってこその立ち位置ではあるのですが、とにかくフロンティアではまず腐りません。
アグロ相手にはコプター破壊+2点で擬似的なスイーパーとなり、ミッドレンジにはただただ1:2交換を行い、コントロール戦では青巨人を巡る攻防の鍵となる。コンボ相手ですら、その干渉範囲の広さからそれなりの活躍をします。
青い探索デッキがそれ以外にアドバンテージで負けることが無いように、コラコマを投入したデッキも探索以外とのリソース比べで負けません。

《熱病の幻視/Fevered Visions》
お互いにドローし、手札枚数参照でダメージ。
繰り返しますがフロンティアではとにかくエンチャントに干渉し難いので、軽くてアド源でフィニッシャーなコイツは結構スゴいです。
青赤というカラーリングと、これ以外にライフを詰める要素が必要な点が玉に瑕。

《自然に仕える者、ニッサ/Nissa, Steward of Elements》
フロンティア界の《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》。
プラス2の硬さと可変マナコストの柔軟性が強みで、盤面に干渉し辛いのが弱み。
ある程度は土地を伸ばさねばならないデッキが多い中、心強い味方と言えます。
奥義に圧力があるため、相手の無理な攻撃も誘い易いでしょう。

《先駆ける者、ナヒリ/Nahiri, the Harbinger》
忠誠値と盤面干渉能力が魅力。
エンチャントを除去できるのが何よりも凄い。
出来れば手札を捨てること自体に意味を持たせられるデッキだとなお良いですが、単なる除去として用いてもまあそれなり。
可能な限り、奥義で喚ぶクリーチャーやアーティファクトは強力なものを用意しておくべきです。余りにも硬いせいで放置されてしまうことも。


総評として、《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》は最強のうちの一枚。
これと《削剥/Abrade》のせいで、アーティファクトはどこから割られても文句が言えない状況です。


・土地

土地でマナフラッドを受けることが出来れば非常に強力。ある程度マナを伸ばすことが多いデッキにとっては尚更のこと。
詳しくは次項のマナベースで。


5.マナベースと特殊能力土地

フロンティアのマナベースは少し独特。
二色以下は無理なく構築出来ますが、楔三色よりも弧三色の方が優れていて、楔三色と四色にはそこまでの差がないという状況です。

・安定度
二色>弧三色>楔三色=四色


こうなってしまう原因は、フェッチランドとそこから出すバトルランドが有効色しかないから。
色マナについて気をつけるだけならば既存のデッキを参考にするのが良いでしょう。

フェッチデュアランを用いてマナベースを組む際の注意ですが、中心色とタップイン率をよく考えるべきです。
例えばグリクシスカラーのデッキを構築するとして、フェッチデュアランの組み合わせは赤黒と黒青。つまりその中心色は黒。
この場合、黒のダブルシンボルはまず安定し、逆に赤赤と青青を共存させるのは困難になります。
黒をタッチ程度に抑えて赤と青が濃いデッキを組むのなら、フェッチランドではなく、ファスト、イニスト、ダメランなどを主軸にしましょう。
マナベース的に劣っている楔三色はもう少し厳しく、ティムール霊気池ではかなり緑に寄せたマナベースを組んでダブルシンボルを捻出し、《霊気との調和/Attune with Aether》に《霊気拠点/Aether Hub》まで使っても、色事故と無縁とまではいきませんでした。


そして忘れてはいけないのが能力を持った土地の存在。
四色など若干無理が出るマナベースで、能力土地まで欲張るのは危険です。
けれども、二色や三色のデッキはマナベースに余裕があるはず。
そのスペースに能力土地を採用しておくかどうかが、長期戦の勝敗を左右することにもなりかねません。
色の出る能力土地ならばマナベースにあまり負荷をかけずに済みます。

能力土地は、どんなデッキでも可能な限り採用すべきです。

それでは有力な土地をサイクル別に見ていきましょう。

・砂漠土地
ここでは主にペイン砂漠のことです。
各単色に存在するペイン砂漠は、インスタントタイミングで起動出来る赤の《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》と青の《イプヌの細流/Ipnu Rivulet》が飛び抜けて強いです。
特に《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》は幅広いアーキタイプで採用されており、三色のアグロデッキが複数枚積んでいることも。
有色マナが出せてアンタップインなので、どんなデッキにも入る力があります。
起動コストが『砂漠一つ生贄』であるため、様々な砂漠を採用することで、マッチアップ毎に効果的な砂漠を選んで複数回使うというのも良いでしょう。
無色砂漠の中では、強力な墓地対策である《屍肉あさりの地/Scavenger Grounds》や、フェッチとの相性が飛び抜けて良い《敵意ある砂漠/Hostile Desert》などが有力な選択肢です。

・ミシュラランド
対抗色ミシュラの問題点はタップインということ。
マナカーブに沿った展開が重要なデッキでは採用し辛いですが、二色ランドかつ能力土地というのは特別な魅力。
中でも起動コストが軽く絆魂を持った《乱脈な気孔/Shambling Vent》と、呪禁という強力無比な能力がある《伐採地の滝/Lumbering Falls》がオススメです。

・ドミナリアの有色タップインサイクル
それぞれユニークかつ強力な能力を持った土地なのは間違いないですが、タップインという点が非常に気になります。
採用の可否はデッキの方向性とご相談。


ここからは無色土地です。

・荒廃土地
無色ですが、能力の起動に色マナを要求します。
比較的強力なのは黒と青。

・《ウェストヴェイルの修道院/Westvale Abbey》
一定のアグロデッキに対して、オーメンダールに変身させるという行為が勝利条件たり得ます。
コントロールにもトークン生成が強烈な対抗手段となり、全体除去を変身で躱すなんて使い方も。
横並びの要素を持つデッキなら、特に悩まず1枚から採用できます。

・《廃墟の地/Field of Ruin》
フロンティア待望の特殊地形対策。
イクサランから参入した、《アズカンタの探索/Search for Azcanta》などの変身後が土地であるカード群は、一度変身してしまうと止めるのが困難です。
もちろん付き合わずに速く試合を終わらせるというのも手ですが、コントロールなど長期戦が前提のデッキならば、採用しない理由を探す方が難しいのかなと。

・《光輝の泉/Radiant Fountain》
アグロ悶絶の2点ゲイン。
フラッド受けになる訳ではないので、おおよそコントロール御用達。
とはいえ近頃では《廃墟の地/Field of Ruin》などに押されて優先度は下がり気味か。

・《精霊龍の墓/Tomb of the Spirit Dragon》
《搭載歩行機械/Hangarback Walker》や《つむじ風の巨匠/Whirler Virtuoso》などとの併用が大前提となりますが、継続的にライフを得ることが可能で、ある程度長引くととんでもない回復量を叩き出すことも。
ダメージレースそのものを否定出来てしまうため、マッチアップ次第では非常に強力。


御覧のように、フロンティアにも様々な効果を持った土地が存在します。

無色土地の採用可能枚数は、
二色デッキならば2〜3枚。
三色デッキならば1枚。
四色では諦めるのが無難でしょう。

色マナが出せる能力土地は三色四色でも無理なく採用出来るので、マナベースと相談してねじ込んでみて下さい。


6.サイドボード


サイドの構築についてはふんわり書きます。

フロンティアでは大きく分けて三種類の対策が必要です。
対アグロ、対コンボ、対コントロール。

ここでは主に対コンボについて軽く。

どんな色でも使えて、効果がある相手には劇的に刺さるもの。
つまりヘイトアーティファクトですね。

《没収の曲杖/Crook of Condemnation》
最上の墓地対策。
繰り返し利用できる性質のため、コントロールにもサイドイン可能。昂揚や探査、対象を取る墓地回収など普遍的かつ強力な効果を一気に封じることができる。
強いて言えば本体2マナ、追放能力に1マナかかるのが難点。

《屍肉あさりの地/Scavenger Grounds》
サイドからでも安心の墓地対策。
砂漠シナジーを持ち、マナを出せる点が持ち味。
アグロデッキでサイド後マナカーブを重くしたい場合などに。

《トーモッドの墓所/Tormod’s Crypt》
0マナ設置、0マナ起動。
自分の墓地を追放しない点が特色。
マナを構える必要が無いため、常に動き続けたかったり、マナカーブが低くその余裕が無いデッキで。
1度しか使えないためにコントロールへのサイドインは微妙か。ある程度コントロールと長く戦わなければならない場合、《没収の曲杖/Crook of Condemnation》の方をオススメします。

《魔術遠眼鏡/Sorcerous Spyglass》
覗き見が付いた針。
対PW、対エネルギー、対ラリーなど。
機体やPWを指定する目的でサイドインするなど、ある程度普通のミッドレンジ相手にも使えるのが魅力。
フロンティアには除去の入ってないデッキが基本無いため、《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》よりはこちらがオススメ。


特に墓地対策は強く推進したく。
ただでさえフロンティアには探査、昂揚、墓地回収、たかり屋などがあるのに、ラリーや魂剥ぎといった墓地利用コンボも存在しています。
墓地に対して無防備を晒すのは非常に危険です。


7.後書き

如何でしたでしょうか。
これで多少なりともデッキの弄り方が分かったぜ、となってもらえたら幸いです。

この記事を書いた動機は、この前のフロンティア神挑戦者決定戦で色々なデッキを見て「どうにもカード選択がスタン時代の焼き直しだなあ」と感じた事でした。
例えば、アブザン系デッキの5マナが《風番いのロック/Wingmate Roc》ばかりで、エスパーやジェスカイ(青白系の系譜)だと《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》になっているのは何故なんでしょう。
アブザン系では瞬速が活かし辛く、能動的に反転出来ないから?
昂揚を狙ってイシュカナを採用するなどの工夫や、他の5マナ域の検討は行われたのでしょうか?
そもそも5マナに限る必要すらありません。6マナまで見上げれば《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》、《龍王ドロモカ/Dragonlord Dromoka》、《保護者、リンヴァーラ/Linvala, the Preserver》、《死の宿敵、ソリン/Sorin, Grim Nemesis》など。

そういう在りし日のデッキをそのまま持ち込んで、大いに楽しむというのも素晴らしいことだと思います。
けれど、ここはフロンティアという新しい世界。大元のアーキタイプやコンセプトまで弄らずとも、多少なりカードスロットを差し替えたり、マナベースやサイドボードを最適化することによって、そういうデッキ達がもっと輝くんじゃないか。勿体ない。そう考えたわけです。

長い文章にお付き合い頂きまして、本当にありがとうございます。

フロンティア良いとこ、一度はおいで。

コメント

ズツキ
2018年4月30日17:35

お疲れ様です。せっかく揃えたカードですし、継続して使ってみたいですよね!
公式で認められるといいですね!

ワカミ
2018年4月30日21:31

コメントありがとうございます。
モダン基準に合格するようなパワーカードなんて中々出ないし、出せません。となるとスタンを禁止されたカード達の受け皿は必要だと思っています。
時を越えた探索や宝船の巡航が使えるという魅力もあり、まあぼちぼちやっていければ良いなあ。

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