■はじめに

晴れる屋で開催されたパイオニア王2020秋、優勝しました。

使用デッキはロータスコンボ。
《死の国からの脱出》禁止後は沈んでいましたが、MOチャレンジで《深淵への覗き込み》型が勝利して以降、メタの一角を占める状態が続いて居ました。
とはいえ新機軸の「80スパイ」や「黒単アグロ」に「スピリット」などとの相性が厳しく、少し前まで鳴りを潜めていたデッキです。

転機は「ボロスバーン」の隆盛。
《乱動する渦》を携え帰ってきたこのデッキは、《オムナス》の影に隠れるアグロ勢を横目に《オムナス》を薙ぎ払ってしまいました。
これにより環境は一挙にアグロ・ミッドレンジの叩き合いへと移行します。アグロはミラーを勝ち抜ける直線的な構成が多くなり、ミッド〜コントロールはアグロを意識した構成になります。

すると当然、意識されていないコンボデッキは隙間産業のチャンスです。
《乱動する渦》が競合相手の「スパイ」対策として機能し、更に「スパイ」は「荒野の再生」「5色ニヴ」との相性が悪いことが幸いしました。

そういう環境の中だったので、優勝することが出来たと考えています。

下の方ではパイオニア環境の雑感なども書いてますので、今週末パイオニア神挑戦者決定戦に出る予定のある方に是非読んでいただきたいです。


■ロータスコンボとは

デッキリストはこちら。
https://article.hareruyamtg.com/article/46084/


《睡蓮の原野》がキーパーツです。
これを《演劇の舞台》で増やした後、《見えざる糸》《砂時計の寺臣》《熟読》の三種でマナを増やし、《成就》から《全知》を設置、最終的には《副陽の接近》を二度唱えて勝利します。

《全知》の設置には計14マナが必要ですが、そこを何とかするのが《深淵への覗き込み》。単純に物量で解決します。
《睡蓮の原野》二枚から6マナ、何とか9マナを出して《深淵への覗き込み》、残った2マナから《見えざる糸》。後はライブラリの半分という豊富な手札からコンボを成立させるだけです。

コンボの性質上、《睡蓮の原野》を複製する5ターン目まで生き延びられるかどうかが非常に重要なデッキであり、悠長に《演劇の舞台》を構えられるような遅いマッチアップを得意としています。
クロックを押し付けつつの手札破壊やソフトカウンターを擁する「黒単アグロ」「スピリット」、あるいは単純に自分より速い「スパイ」「ウィノータ」、何故かメインボードからサイドカードを叩きつけて来る「緑信心」などのデッキを苦手としています。

手札破壊やカウンターなら何でも良い訳ではなく、《熟読》や《時を越えた探索》によるリソース復旧、或いは土地だけ並べてからの《深淵への覗き込み》など、ターン的な余裕を与えるとコンボを完遂してしまう。そんなデッキです。


■個別のカード選択について

《願いのフェイ》
以前は立派なコンボパーツでしたが、禁止によってあくまで純粋な勝ち手段に。2マナだった《死の国からの脱出》に比べて、《深淵への覗き込み》は7マナと重すぎます。
結果、コンボパーツとして振る舞うことは無くなりましたが、未だにメインボードに4枚居座っている理由とは何か。
それは対アグロにおける壁。
このカードが1/4ブロッカーとして立ちはだかり、そして最後には《至高の評決》《九つの命》にアクセス出来るからこそ、今の《ルールス》隆盛の世を戦うことが可能なのです。

《タッサの信託者》
ボロスバーン相手に壁が《樹上の草食獣》《願いのフェイ》8枚では足りなかったため採用。
ついでにメイン《殺戮遊戯》への耐性もゲット。

《狼柳の療養所》
このデッキには基本的にマナ加速が3種12枚しか入っていませんが、それだと《深淵への覗き込み》を唱える前にある程度のマナ加速を消費してしまうと、《全知》の設置が出来なくなってしまいます。
2マナ浮きから14マナに到達する12マナという数字は、特に《見えざる糸》の使用制限を如実に表しており、1マナずつしか増えない《砂時計の寺臣》や《熟読》が何枚残っていようとも意味がないのです。
そこに《狼柳の療養所》があれば、1マナ加速が2マナ加速に化けますので、14マナに悠々到達出来ます。
昔この枠は4キルのための布石でしたが、今はコンボ完遂のための必須枠と言えるでしょう。

《神秘の神殿》
タップイン増えたので、もう少し減らした方がいいですね。カードとしても《バーラ・ゲドの復活/聖域》の方が強い。

《九つの命》
対アグロ必須カードです、全国一千万人の《願いのフェイ》型ロータスプレイヤーは全員入れてください。
以前ラストサン予選で赤系アグロと7マッチした日、11回設置しました。(結果は5-2)

《精霊龍、ウギン》
「スピリット」はウギンが苦手。フロンティア時代からの合言葉です。
ついでに最近は「五色ニヴ」にも入れてます。概念泥棒を焼きます。


■パイオニア王

1.黒単 後手○×○
・《思考囲い》されず、《樹上の草食獣》経由で4キル。
・《思考囲い》から《騒乱の落とし子》、《変わり谷》によるビートダウンに抵抗できず。
・ハンデス3連打されるもクロック遅く、《神々の憤怒》で盤面一掃。《巧みな軍略》を連打し、《時を越えた探索》《熟読》に辿り着いて勝ち。

2.ニヴ 後手○×○
・《睡蓮の原野》を見せた後、相手投了。
・デッキわからず、《神秘の論争》だけインしたものの、素引き《殺戮遊戯》にわからされ負け。
・《殺戮遊戯》《ニヴ=ミゼット再誕》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と攻め立てられ《ドビンの拒否権》を構えられるも、《見えざる糸》で色マナを潰して《時を越えた探索》《深淵への覗き込み》《タッサの信託者》で勝ち。

3.ニヴ 先手○○
・《殺戮遊戯》に《タッサの信託者》で勝ち。
・《思考のひずみ》で手札を吹き飛ばし、次のターンに《熟読》で勝利を確信するも《概念泥棒》が飛び出る。更に《ニヴ=ミゼット再誕》で一気に敗勢もカウンターめくれず、《巧みな軍略》《時を越えた探索》連打から《爆発域》に辿り着き、《熟読》《深淵への覗き込み》から《タッサの信託者》で勝ち。

4.ジャンドサクリファイス 後手○×○
・《精霊龍、ウギン》から《深淵への覗き込み》で勝ち。
・《朽ちゆくレギサウルス》にライフ削られ、《九つの命》か《精霊龍、ウギン》かで凌ぐ場面。《忘れられた神々の僧侶》が《九つの命》を貫通するためやむなく《精霊龍、ウギン》で流すも、《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》に削り切られ負け。
・《恋煩いの野獣》に削られるも《精霊龍、ウギン》から《深淵への覗き込み》で勝ち。

5.バントスピリット後手○×○
・《樹上の草食獣》が固い展開。《熟読》から入ると、スピリットを出し《霊廟の放浪者》を強化して3マナ要求。《砂時計の寺臣》でかわしてマナ寝てるので勝ち。
・《樹上の草食獣》《願いのフェイ》で守りを固めるものの、《スカイクレイブの亡霊》に突破されて負け。
・《樹上の草食獣》から《睡蓮の原野》を3枚並べ、《熟読》から入るとリアクションが薄い。《呪文捕らえ》と決め打って《精霊龍、ウギン》をキャスト。通ったのでマイナスで盤面流して勝ち。

6.オムナス再生後手○○
・お互いに土地を伸ばし、《見えざる糸》で《神秘の論争》を超えて勝ち。
・土地詰まったところに《思考のひずみ》で手札を吹き飛ばし、《深淵への覗き込み》で勝ち。

7.ID

SE1.オムナスランプ先手○○
・《コブラ》《ウーロ》とマナ加速の返しに《深淵への覗き込み》で勝ち。
・《砂時計の寺臣》素出しに、《僻境への脱出》で《神秘の論争》がめくれるも土地に青マナが残らず、《深淵への覗き込み》で勝ち。

SE2.オムナス再生 先手×○○
・土地10スペル2(深淵への覗き込み×2)で負け。
・色マナ無く、《演劇の舞台》で《ケトリアのトライオーム》をコピーする立ち上がり。《荒野の再生》を《神秘の論争》し、《オムナス》が出てきたところで《見えざる糸》から《深淵への覗き込み》で勝ち。
・《オムナス》から4マナをサイクリングに費やした返しに《深淵への覗き込み》で勝ち。

SE3.赤単 後手○○
・《樹上の草食獣》から4キル。
・《樹上の草食獣》《願いのフェイ》《樹上の草食獣》と連打し4キルの構えも《減衰球》。更に《乱動する渦》置かれてピンチだが、《熟読》《巧みな軍略》で《爆発域》に辿り着き、《九つの命》《神々の憤怒》で安全を確保して《深淵への覗き込み》で勝ち。


■パイオニア環境について

前提として、今の環境には「常勝出来るデッキ」が存在しません。
各デッキに弱点が存在し、それ故に当たり運などの要素が強く絡む群雄割拠です。

そこで私の考える「一定以上の勝ちを狙えるデッキ」について書いてみたいと思います。
もちろんここに記載が無いデッキでも、パイオニアチャレンジ優勝してるようなデッキもありますから油断は出来ません。


■アグロの部

・ボロスルールス
《乱動する渦》を手に入れ大躍進。《ウーロ》《オムナス》の前に沈んでいたが、メタカード一枚でここまで息を吹き返すとは。なんだかんだで最速のデッキということか。
《ボロスの魔除け》《大歓楽の幻霊》が足を引っ張るため、アグロ同型では不安要素か。
黒単などと異なり《森の女人像》で詰むのは相変わらず。
《乱動する渦》以外で対策を取っていない場合、「スパイ」への干渉手段が少ない点にも注意。
「赤単」「五色ニヴ」が苦手。

・赤単
ボロスルールスとの比較要素は《夢の巣のルールス》《砕骨の巨人》が主か。
現状のパイオニアでは、「ルールス」の公開によって相手がマリガン基準を厳しくするため、デメリットの方が大きいという認識。
《砕骨の巨人》は主に赤系に対して有効で、相棒を見せた相手を粉砕できるパワーがある。
一方でサイドボードの白いカードが採用出来ないのがデメリットで、《岩への繋ぎ止め》などを失っているため大型クリーチャーへの対処に劣る。
苦手な「スパイ」対策としての《集団的抵抗》の採用は白眉。
「五色ニヴ」が特に苦手。

・グルールアグロ
最速で《ゴブリンの熟練扇動者》を展開し、《炎樹族の使者》《無謀な奇襲隊》《アタルカの命令》で対戦相手を瞬殺するデッキ。
最大速度は赤のアグロを上回る一方、干渉を受けた際の脆さもひとしお。
展開の起点であるマナクリーチャーや《ゴブリンの熟練扇動者》を狙われると途端に苦しい。
強力な面展開により《森の女人像》を苦にしない分、「五色ニヴ」への苦手意識は無いのが差別点か。
「赤単」「ボロスルールス」「全体除去」が苦手。

・黒単
《思考囲い》を使う唯一のアグロ。
蘇るクリーチャー群とユーティリティ土地が非常に優秀で、アグロにあるまじき粘り強さを備える。
とはいえアグロの常として《森の女人像》《ウーロ》《オムナス》が厳しい。
相手への干渉手段が豊富で《騒乱の落とし子》《悪ふざけの名人、ランクル》が攻守に働くため、クリーチャー戦は得意。
「五色ニヴ」「荒野の再生」「オムナスランプ」など、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が入ったデッキが苦手。

・緑信心
マナ加速から《ビビアン》《カーン》《ニッサ》《ガーガロス》を叩きつけるデッキ。
実質コンボデッキとも言えるアーキタイプでありながら、《カーン》からシルバーバレットを繰り出す対応力も有する。
序盤の展開がワンパターンなため、軽い干渉手段でテンポを取られると、折角のプレインズウォーカーもすぐやられてしまいがち。
干渉力の強い「赤系アグロ」「黒単」「スピリット」が苦手。

・ルールスオーラ
《天上の鎧》《きらきらする全て》を軸としたアグロデッキ。
アンフェア染みた速度を持ち、《ウーロ》《オムナス》の回復を上回る打点でゲームを決められるのが魅力。
サイズを無視できる黒除去が苦手で、特に《ケイラメトラの恩恵》すら意味がない《影の評決》によって、得意としていた「五色ニヴ」とは相性が逆転してしまった。
速度で劣る「スパイ」や致命的な除去を持つ「五色ニヴ」が苦手。

・スピリット
環境唯一のクロックパーミッション。
打ち消しに長けたアゾリウスカラーと、《集合した中隊》を使うバントカラーがある。
新戦力の《スカイクレイブの亡霊》が非常に強力で、盤面干渉能力に欠けるスピリットが様々なパーマネントへの対応手段を得た。
とはいえ従来のデッキ相性を覆すほどではないかもしれない。
動きが大振りな「五色ニヴ」を咎めやすい、唯一のアグロデッキ。
「赤系アグロ」「《サメ台風》が入ったデッキ」が苦手。


■ミッドレンジの部

・五色ニヴ
ミッドレンジの王。アグロを押しつぶすもの。
《影の評決》を得て、《石とぐろの海蛇》という弱点を若干改善。
豊富な除去と《森の女人像》《ウーロ》《オムナス》でアグロを滅ぼし、《ニヴ=ミゼット再誕》のアドバンテージで長期戦を切り抜け、《殺戮遊戯》でコンボを破壊できる対応力が魅力。
一方で、様々なカードを自由自在に使いこなす要たる《白日の下に》が干渉を受けやすく、《神秘の論争》《時を解す者、テフェリー》などを相手にすると一筋縄ではいかないことも。
大振りなアクションを咎められる「スピリット」、大振りなアクションの返しに負けてしまう「ロータスコンボ」が苦手。

・荒野の再生
ティムール、オムナス、スゥルタイの三色が存在。
それぞれ打ち消しの量などが異なるものの、インスタント主体の構築に《成長のらせん》《ウーロ》《荒野の再生》という主軸は同じ。
メインから《神秘の論争》を採用しているだけあって、青いデッキには無類の強さを誇る。
軽い干渉手段に欠けるため、メインボードでアグロに何も出来ない展開もある。
「ルールスオーラ」「ロータスコンボ」「ナヤウィノータ」が苦手。

・オムナスランプ
これ実は使ったことなくてそんなに色々書けないです。
《僻境への脱出》《発生の根本原理》による爆発的な回転と、《フェリダーの撤退》《ケンリス王》による速攻が鍵か。
《睡蓮のコブラ》から入る場合は除去されると痛いが、プレイで補える範疇かもしれない。
相手に干渉するつもりが無いため、「スパイ」「ロータスコンボ」などコンボデッキが苦手。《乱動する渦》にも干渉出来ないはずだが、実際のところ対赤系アグロとの相性はいかがなものだろう。


■コンボの部

下の三つは、全て《乱動する渦》の影響を受けるデッキです。何てこった、最強のコンボ対策か?

・スパイ
3キルを追い求める最速のコンボデッキ。
ありとあらゆる妨害を受け、ありとあらゆる負け方をするものの、速度ただ一点で突破しうる恐るべきデッキ。
山札をひっくり返した後は相手に干渉出来ないため、《白日のの下に》から《殺戮遊戯》や《影の評決》を繰り出す「五色ニヴ」、多数の打ち消しと共に《発展//発破》を持つ「荒野の再生」、《集団的抵抗》《乱動する渦》の「赤単」が苦手。

・ロータスコンボ
5キルに関してはそれなりの粘り強さを持つコンボデッキ。
《睡蓮の原野》を並べる行為への干渉し辛さを強みとして持つものの、《減衰球》一枚で全てが崩壊する危うさを抱える。また、カードを引く行為が勝ちに繋がるため、ドロー制約系の置物が刺さる。
速度で絶対に勝てない「スパイ」、打ち消しを超え切れない「アゾリウススピリット」、3ターン目に《カーン》が出てくる「緑信心」などが苦手。

・ジェスカイルーカヨーリオン
いわゆる《変身》コンボ。
コンボで勝つわけではなく、圧倒的な盤面を形成する。
《裏切りの工作員》が刺さる相手全般に強く、土地を取られる事すら厄介なミッドレンジ勢にとっての鬼門となるデッキ。
「五色ニヴ」には基本有利に立ち回れるものの、《殺戮遊戯》によってデッキが機能不全に陥る点に注意。
一方でアグロ対策は80枚デッキながら《メレティス再誕》や全体除去に依存しており、特に赤系アグロは《乱動する渦》によってライフゲインはもとより《創案の火》の最大展開すら封じられるため、非常に苦手。
「スパイ」にも限られたサイドボードから回答を引かなければならず、苦しい戦いを強いられるだろう。




■おわりに

久々に結果を残せて本当に嬉しいです。
決勝で当たった相手がかつて神決定戦を争った親友ということも含めて、最高の勝利が得られました。
今のパイオニアは色々なデッキにチャンスがある良い環境でめちゃくちゃ面白いです。更なる研鑽を積んで行きたいですね。

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